伝わらない、伝えられない
ゆっくりと顔を近付けて目を閉じる。
目の前の葵に胸の高鳴りを感じた。
もうほんの少し近付けば触れ合うであろうその距離。
でも、俺の頭に浮かぶのは…
「ごめん」
勢いよく葵の肩を押す。
咄嗟にしてしまった行動。
なんで、昔から望んでいたはずの事だろ?
なのに、何やってんだよ…
自分の行動に対して理解に苦しむ。
「やっぱりね?悠斗には出来ないと思ったよ」
「なっ?!」
俺をからかったのかよ!
睨むように顔を上げると、俺の方が驚かされてしまった。
そこには、かなり真剣な顔をした葵が立っていたから。
こんなに長い間一緒だったのに、その表情は見たことがない位で…