伝わらない、伝えられない


「ねぇ、悠斗。私にキスしようとした時…誰のこと、考えてた?」



まるで何か分かっているような口調で、葵は話しはじめる。


でも、俺には言ってる意味が分からない。



「何言って…」


「私と一緒にいて、その人の事ばかりを考えているんなら…悠斗が好きなのは、私じゃない」



拒絶された俺の想い。


余計に頭が混乱する。


葵が好きじゃないってどういう事だ?そもそもなんで葵がそれを決めつけるんだよ!



「俺はお前が好きなんだ!」


「じゃあ、どうしてキス出来なかったの!?」


「そ、それは…」



返事が出来ずに言葉が詰まる。


さっきから頭に浮かんでいる、あいつの存在…


これ以上核心に迫られたくなくて心が荒れる。


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