伝わらない、伝えられない
「自分の気持ちを勘違いしちゃダメだよ?」
聞きたくない。
俺の本心を暴かないでくれ…
葵の静かな声に耳を塞ぎたくて堪らなかった。だけど葵が、それを許すはずがない。
「私への想いは恋心じゃない…
それはさっき、悠斗が一番分かったはずだよね?」
俺をまっすぐ見ながら、真実を突きつけてくる。
その瞬間に肩の力が抜けていくのが分かる。
そう、俺は気付いていたんだ…自分の本当の気持ちに。
でも信じたくなくて、葵を好きだった自分を否定したくなくて…
いつの間にか意地になっていたのかもな。
「葵…悪い、俺……」
俺が意固地になったせいで傷付けてしまったんだな。葵も明も…ちとせも。
「謝んなって!ほら、早く行っておいで?悠斗の好きな人のところへ」
怒ってもおかしくないはずなのに、葵は俺の背中を押してくれた。
やっぱり気持ちが変わってしまっても、葵を好きでいて良かった。これは俺の素直な気持ちだ。
「行ってくる!」
「うん、頑張ってこい!」
俺は駆け出した。
俺のちゃんとした想いを伝えるために…