伝わらない、伝えられない
一直線に玄関へと足を進める。
急ぐ必要があるかは微妙だが、体が急かされるように動いた。
「帰んの?」
扉の前には明が立っていた。その表情は何処と無く不満そうで…
そういえば、明を待たせていたんだった。
帰ろうとしていた事に対してのお小言をもらう覚悟をしたその時…
「帰るのは構わないけどさ?せめて自分のカバンぐらい持って帰ろうよ」
え?別に構わないの?
言われたのは想像とかけ離れた言葉で。
開いた口が塞がらない俺に、明はスクールバッグを手渡してくる。
「わ、悪いな、わざわざ持ってきてもらって…」
「まぁ伝言ついでにって思ってたからよ」
「…伝言?」
一体誰からで何の伝言なのか。
俺は明の次の言葉を待った。
「笹原先輩からちとせを家に送るって伝えておけって言われたんだよねぇ」
「笹原先輩…」
よりにもよってこのタイミングで先輩が出てくるとは。
名前を聞くだけで沸き上がる感情、間違いなくこれは嫉妬だ。
素直になるまではずっと否定してきた。
でも今は…
「俺さ、葵に…告白したんだ」
俺は静かに明へ話しはじめた。