伝わらない、伝えられない


「でも逆に説教されちゃったよ。
でも、そのお陰で気付いた事があって…」


「ちとせを好きだって?」



黙って話を聞いていた明が口を開く。


俺はそれに戸惑うことなく頷いた。


明と視線が交差する。まるで俺の心情を探ろうとしているかのような…


そんな瞳を明はしていた。


時間にすれば数秒だったとは思うが、俺にとってはもっと長く感じられた。



「お前鈍すぎ。自分のこと位自分で分かっとけっつーの!」


「…すまない」


「謝る相手が違うだろ?早く行けよ」



明は俺を反転させると背中を一押ししてきた。


反射的にその勢いでまた走り出す。



「明。また明日な!」



一瞬だけ振り返ってそう告げると、明はいつもの明るい笑顔を俺に返してくれた。


俺は恵まれてるな…


こんなにも良い奴らと親友になれたんだから。


明、葵、そしてちとせ…



早く会いたい…


ちとせに会って、きちんと伝えたい。


あいつの事を考えるとぐんぐんと足が速まっていった。


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