伝わらない、伝えられない

急な訪問side悠斗

いつも歩く帰り道、変わらない街並み。


でも今日は雰囲気が違うように感じる。


それは俺の心境の変化でなのか。


久しぶりだ、こんなに清々しく思うのは…


やっぱり俺、自分に嘘をついてたんだな。




ピンポーン。


ちとせが出てくるのを待つ間乱れた息を整える。


一心不乱に走ってきたのは良いが、今になって緊張してきた。



しばらくして扉が開いた。


そこで俺は固まってしまう…


なんで…


なんで、笹原先輩がちとせの家から出てくるんだよ！


先輩はいきなり現れた俺に驚くことなくカバンを手に取ると、玄関から出ていこうとする。


そんな先輩をちとせは引き止めて…


込み上げる苛立ち。


間違いねぇ、確実に俺は先輩に妬いてるんだ。


今だけじゃない、ずっと前から…マジで自分が馬鹿すぎて嫌になる。


もうそんなに以前からちとせを好きになっていた、なんてよ…



「ごめんな？彼女を部屋に待たせてるから、もう行かなきゃ」



先輩はちとせの手を離すと、部屋から出ていく。


いや、それよりも…今、なんて言った？


先輩って…彼女いんの！？