伝わらない、伝えられない
そりゃルックスもいいし性格も男前だし、彼女がいてまぁ納得だけど…
ちとせを好きだと思ってたから。
唖然とする俺の横を通りすぎようとする先輩。
だけど、いきなり立ち止まって…
「あぁ、そうだ。無闇に男を家にあげないように言っとけよ?未来の彼氏くん」
「…なっ!」
耳元でいきなりそう話されて顔が熱くなる。
目を合わせると少し前に見た、挑発的な表情を浮かべていた。
「まぁそれだけ、じゃあな」
先輩は俺達二人に笑いかけると、手を振って今度こそその場を後にした。
「…家に、上がる?」
「お、おぅ…」
気まずい雰囲気の中、俺はちとせの家に入った。
前に遊びに来た時と変わらない、シンプルだけど女らしい部屋。
いつもは葵と明も一緒だから余計に意識してしまう。
「飲み物、入れるね…お茶でいい?それともコーヒー?」
「それは!後でいいから…先に話を聞いてくれ」
台所へ行こうとするちとせを慌てて引き止める。
時間を延ばせば延ばすほど、こういうのは言いづらくなる気がするし。
テーブルに向い合わせで座る。
どう切り出せばいいのか…
珍しく俺の頭が高速で回転し出した。