伝わらない、伝えられない


「さっき、見たよな?…葵に告白してた所」



なに当然のこと聞いてんだか。


考えて出た言葉がこれって、自分の頭の悪さにため息が出る。



「うん」


「そう、だよな…」



下を向いたまま返事をするちとせ。


また無言の空間が広がる。


お前は今、どんな顔をしてるんだ?


泣いてたりしないかと不安になる…


明はちとせの好きな奴は俺だと言っていた。


何となく自分でも予感めいたものがあったのだが、完全には信じきれないというか…



「結果から言うと、フラれてよ」



それを聞いた途端にちとせはバッと思いっきり顔を上げる。


声に出さなくても分かる…


その顔はまるでなんで、どうしてと聞いているようだったから。



「俺の葵に対する気持ちは恋じゃないって…はっきり言われた」


「そんな…」



ガタッ―――


ちとせは音をたてて立ち上がると、玄関の方へと歩いていこうとする。



「何処にいくんだよ!」



俺は後を追ってちとせの手を掴んだ。



「葵の所」


「行って…どうすんの?」


「だって!」



まぁ話さなくても大方の行動は読める。


考え直してとか言うつもりだろう…お節介な奴だ。


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