伝わらない、伝えられない
瞬間、恋心side悠斗
「またまた~、ご冗談を。何言ってんの?悠斗は…葵が好きなんでしょう?」
いつものおどけた口調。
だけど、身体が合わさっている所から震えが伝わってくる。
だから無理してそういう態度をとっているんだって、すぐに分かった。
ちとせは俺が葵を好きだと信じこんでる。
そりゃそうだ、俺がちとせにそう話していたんだし…
実際俺自身、自覚したのはついさっきだからな。
「ちとせ…」
「エイプリルフールはとっくに過ぎましたよー?もしかして4月1日に会えなかったら後れ馳せながらのって奴?」
名前を呼んでみても俺と目も合わさずにずっと喋り続けている。
話す間も与えてくれない位に延々と…
「ちとせ!」
どうしても話を聞いてほしくて、強引に肩を掴んで目を合わせた。
不安げに揺れるちとせの瞳。
それだけでこいつの辛さを感じ取れるようだった。
俺が気付くのが遅かった分だけ、ちとせを傷付けていたんだよな…
今さらだけど、後悔が押し寄せる。