伝わらない、伝えられない
気が付いたら、ちとせの存在が俺の中で大きくなっていて…
まさか、ここまで惚れていたなんて俺自身びっくりだよ。
自分の鈍感さがかなり悔やまれる。
「嘘でも冗談でもねぇよ。俺はちとせが…本気で好きなんだ」
「そんなの…訳、分かんない」
傍目から見ても混乱しているちとせ。
目を伏せ、片手で額を押さえている。
そりゃ、信じてもらえなくても仕方ないよな…
でも。気持ちだけはちゃんと伝えたいから。
「確かに俺にとって葵は大事な奴だ…」
俺の言葉にちとせが顔を上げる。
動揺を隠しきれない感じの苦しそうな表情…
こいつのこんな顔を見る日が来るなんて思いもしなかった。
周りが沈んでいる時も、ちとせだけは明るくしていて。
楽しい雰囲気を作れる、凄い奴。
それなのに、今そのちとせを切ない顔付きにさせている。
自分を責め立てたくなる反面、ほんの少し…嬉しいと思ってしまった。
皆の知らないちとせの一面。
俺だけが知っているちとせって気がして…