伝わらない、伝えられない
無自覚は罪sideちとせ
「これからは…ただの友達じゃない。彼氏としてちとせの傍にいるから」
そう言って悠斗があたしの手に口づけをする。
彼氏…
その言葉に今まで以上に実感が沸いてきた。
あたし、悠斗と恋人同士になれたんだ。
相手があたしで良いのかな?
こんな、逃げてばっかりいた臆病な奴で。
嬉しさと切なさで目に涙が溜まっていく。
込み上げてくる想いに胸がつまり、声を出せそうにない…
もうただ頷くだけで。
本当は怖くて仕方なかった。
気持ちを言ってしまうことで、葵も明も悠斗との関係がギクシャクしちゃうんじゃないか…
そのせいで三人があたしから離れていっちゃうんじゃないか、って。
だから、素直になっちゃいけない。
わがままになっちゃいけない。
いつの間にか、そう自分で自分を制御しようとしていた。
そんなのは無駄でしかなかったのに…
結局、自分の気持ちを諦めることが出来なかったんだから。
「…えと、これからも、よろしくお願いします」
あたしはペコリと頭を下げる。
今までは友達として、これからは…恋人として。