伝わらない、伝えられない
悠斗があたしの彼氏という事は、当然あたしも悠斗の彼女という事で…
彼女、かぁ。
その響きがくすぐったい感じがして。
顔がまた火照ってくる。変な汗が出てきそうな位だ。
「ハァ…」
少し上から漏れ出たため息に反応して、顔を上げる。
すると悠斗の頬は真っ赤に染まっていて…
こんな悠斗、はじめて見るかも。
「お前なぁ…」
「な、なに?」
赤い顔はそのままに険しい表情を浮かべる悠斗。
あたし、また…何かやらかした?
顔付きだけでは全然分からずに、不安になりながらあたしは悠斗を見る。
「禁止」
「…はい?」
紡がれたその単語だけでは訳が分からなくて、思わずそう返した。
禁止…
何が?何を?
「可愛くなり過ぎるの…禁止」
右上を見上げながら考えを巡らせていると言われた言葉。
瞬間、思考が停止する。
か、かか、可愛い!?
「そ、それは…あたし、が?」
「ちとせ以外に誰がいるんだよ」
確かにここにいるのは二人だけだけど…
だって!だって、あたしが可愛いなんて。
例えお世辞だとしても受け入れられそうにないのですが。