伝わらない、伝えられない
ああ、もう…
心が鷲掴みにされる。
それと共に押し上げられる、絶え間ない独占欲。
そして激しい鼓動と熱さ。
それを落ち着かせようとため息をひとつ吐いた。
ちとせに魅力があるのは前々から分かっていた。
だが見たこともない『女の一面』
それに埋もれていきそうになる。
しかもこいつは…計算じゃなく天然でそういうのをやってのけるんだ。たちが悪い。
「お前なぁ…」
「な、なに?」
眉を下げて不思議そうに俺を見るちとせ。
本当に、無自覚とは恐ろしいな…
「禁止」
「…はい?」
「可愛くなり過ぎるの…禁止」
言った瞬間に固まるちとせ。
その顔がどんどん真っ赤になっていく。
「そ、それは…あたし、が?」
「ちとせ以外に誰がいるんだよ」
言い切ると明らかにあたふたとし始める。
まぁそんな姿も可愛いとか思えたり…
「ちとせ…」
名前を呼んで頬をなぞる。
見つめる瞳には俺だけが写し出されていて…
どちらからともなく口づけを交わす。
互いの想いを、まるで確かめ合うかのように…