伝わらない、伝えられない
「だってアイツ、全然理解しようとしないんだもん。自分の気持ち」
フェンスの方へと歩いていく明を葵はただ黙って見つめる。
葵のいる位置からでは、明がどんな顔をしているのかは分からない。
「ちとせの笑顔が好きだからね…諦める事にしたんだよ。
ホントは、俺の方が幸せに出来る自信あるんだけどさ」
あくまでも強きな発言。
でも苦し紛れなのは、背中から漂ってくる雰囲気で分かる。
何年来の付き合いである葵ならばなおのことだ。
「あーあ、なんで私の周りの男子はバカばっかりなんだか…悠斗といい、あんたといい」
情けないと言わんばかりに、腰に両手をあてて葵は項垂れた。