伝わらない、伝えられない
階段を登りきると、高台にあるベンチに誰かが座っていた。
いや、誰かじゃない。
そこには紛れもなく、ちとせが居て…
俺に気付く様子もなく、段々と暮れかかっている夕日を静かに見つめていた。
その雰囲気は、いつものお騒がせなちとせとは余りにも違っていて…
この間見た、あの苦しそうな顔が頭を過った。
その途端に俺は、何故かそこから踏み出すことが出来ず。
少しの間、ちとせの横顔を見ていた。