伝わらない、伝えられない
しばらくすると、いきなりちとせがこちらへと顔を向けてきた。
お互いの視線が交わる。
瞬間、鼓動が少し早まった気がした。
何…焦ってんだよ、俺?
「あれー? 悠斗じゃん! さっきぶり~」
俺に対して歯を見せて笑うちとせ。
あぁ、いつものコイツだ。
普段と変わらない様子のちとせ。
それに何か安心している自分がいた。
「おぅ」
俺はそんな思いを悟られないように手を挙げて返事をすると、ちとせの横にドカっと座った。