伝わらない、伝えられない


ちとせは中学1年の秋に転校してきた。


『両親が亡くなった』


それが主な原因だ。


出会ったばかりのちとせは常に怯えているようで…


それが気掛かりで声をかけたんだ。


最初は理由なんて知らなかったから、当時の俺はバカみたいに根掘り葉掘り聞いちまって…


ちとせの抱いてるものは、俺が想像していたよりも深く、そして冷たかったのに。


苦笑いを浮かべながら話すちとせを『強い』って真剣に思った。


聞いているこっちも苦しくなるような辛い話。


どう考えたって、平気で居られるはずがないんだ。


そう、平気な訳がない…


それなのにちとせは毎日うっとおしい位に明るくて、常に笑顔でいた。


自分だって大変なのに、他人の心配ばっかして…


今も精神的には落ち着いたとはいえ一人暮らしをしてて、しんどいこともあると思う。


でも弱音一つ吐かないちとせ。


凄いと感じるとともに、寂しさも感じた。


ちとせは甘えたりしないから…


もっと信頼して頼ってほしい、俺達に、俺に…


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