伝わらない、伝えられない
帰り際sideちとせ
押し切られて、悠斗と一緒に帰る途中にスーパーへ。
ここは品揃えも豊富で、全体的に安いから気に入っている(特に野菜とか)。
「何買うの?」
「主にお肉と野菜かな? 明日から三連勤だから、まとめて買っておかなくちゃ」
そう答えながら入口にあるかごを手に取ると、まず一番近くにある野菜売り場へと立ち寄った。
あたしは悠斗達三人のように部活に入らず、代わりにアルバイトをしている。
働いたお金は家賃や公共料金、お小遣いやその他もろもろに充てていて…
何故そんなことをしているかと言うと、あたしには父と母がいないから。
両親が交通事故で亡くなったのは、あたしが中学一年生の時だった。
それまでの生活は結構裕福で、あたしも私立の学校に通っていた。
ゆえに残された遺産も相当な額で…
親戚がお金目当てであたしを引き取ったことは明白だった。
そんな状態が嫌で仕方なかったから、あたしは高校生になると同時に親戚の家を出た。
だから今はアパートで一人暮らし。
当然あたし一人では借りられないので、その親戚に保証人になってもらった。
条件として渡したお金はそれなりだったけど、それでも構わなかった。