伝わらない、伝えられない
「もう!ちとせと遊びたかったのにー!」
葵は俺の横で、すごく残念そうに肩を落とす。
葵のちとせ好きは異常な程だ。
学校でも休み時間の度にちとせの傍でべったり…
もちろん友達の域は出ないが。
ショックを受ける葵を苦笑しながら見ていると、葵はいきなり顔を上げた。
「悠斗もさ! ちとせが居なきゃ嫌だよね?」
「あ? あぁ…」
それは、あいつが居ないとつまらない。
クラスの中心、注目の的。
ちとせの笑顔と明るい雰囲気に、話せばこっちまで楽しくなって…
だから俺のように思う奴は俺達二人だけじゃないはずだ。
ちとせと知り合った奴らは、皆あいつに惹かれていくから。
女だろうが男だろうが。
それだけちとせには魅力があるんだ。
そんな明るいちとせだからこそ、この間のことが…引っ掛かる。