伝わらない、伝えられない
立ち止まっていた足を動かし、俺達も学校を出ることにした。
「仕方ない。悠斗くんとカラオケに行って差し上げますか」
腕を組んでそう言う葵に、俺はまた苦笑する。
「なんで上から目線なんだ?」
あー、やっぱ落ち着く。
こういう風に葵と他愛もない話をしている時が、俺の唯一無二の時間だ。
こんなにも片意地張らなくても良い相手なんて、きっとそうは居ないと思う。
ドキドキとかはしないけれど、あぁ好きだなと感じる。
それが葵な訳で。
「さぁさぁ、遊びへと参りましょー!」
「はいはい」
好きな奴と同じ時間をこうやって共有している。
それはきっと、周りにしてみれば幸せだと思える時間で…
普通はこういう時、相手のことばかり考えてしまうもののはずで。
それなのに今、俺のココロを支配しているのは…