伝わらない、伝えられない
笹原という人物sideちとせ
あたしは今、拓真先輩の家にお邪魔している。
というか強引に引っ張られてきたんだけど。
出してもらったホットココアを飲みながら、先輩を見る。
さっきから必要最低限の言葉しか交わしていないこの重苦しい空間は、あたしにとって居心地が悪い。
真正面に座る先輩は何か聞いてくる事もなく。
読みはじめた小説から一切目を離さないし。
一体何の為にここへ連れて来たんだろうか?
「特に意味なんてないから」
「へっ?」
まさか、口に出してしまっていた!?
そう焦るあまり、間抜けな声を出してしまう。
「なんかお前、困ってそうだったからさ。…迷惑だった?」
迷惑だなんて…滅相もない!
拓真先輩の言葉を否定するように、あたしはブンブンと思いっきり首を振った。