伝わらない、伝えられない
「まぁ何に困ってるのか。話す話さないはちとせが決めな? 話すんなら聞くし」
そう言って先輩は笑顔を浮かべて手を伸ばしてくる。
伸ばされた手は頭上で止まり、今度はあたしの頭を撫でた。
まるで子供にするようにポンポンって感じで…
その手付きが優しくて、とても安心する。
「…ありがとうございます」
これで何回目だろうか?
拓真先輩に救われたのは…
先輩はあたしの一つ上で、小学校の頃からの知り合いだった。
近所に住んでいた私に何かと手を焼いてくれて…
だけど両親が亡くなった事であたしは中学の時に転校。
それがきっかけで会う事がなかったのだけれど。
高校に入って、偶然にもそこで先輩と再会を果たした。
見知った先輩がいる事がすごく嬉しくて。
でもそれと同時に、何故地元から離れた高校に居るのかが疑問だった。
話によると、スポーツ推薦で優遇も良い所がうちの通う高校だったらしいんだけど。