伝わらない、伝えられない
ピン…ポーン―――
しばしの間、先輩とお喋りしているとチャイムが鳴った。
「おっ、来たか。ちょっと待ってて?」
先輩はそう言い置くと、足早に玄関へと向かう。
一言二言話す声が聞こえると、やってきた人物と共にリビングへと戻ってきた。
「あら、ちとせちゃんじゃない。遊びに来てたのね?」
「お邪魔してます。弥生先生」
あたしは立ち上がって、目の前の女性へお辞儀をした。
「もう! 学校以外では弥生ちゃんでしょ?」
うーん、弥生“ちゃん”はちょっと…
そう思いながらもさすがに言えず、苦笑いを浮かべた。
この人は古谷弥生(フルタニ ヤヨイ)。
先輩の大切な人、つまりは彼女だ。
先輩は人気があるし、彼女ぐらい居ても全くおかしくない。
むしろ居ない方が信じられないし…
問題は弥生さんがあたし達の通う高校の先生という所。
しかもあたしの担任でもある。