伝わらない、伝えられない
考える人side悠斗
葵と遊び終え、さっきやっと帰ってきた。
よっぽど部室に籠りきりだったのがストレスになっていたのか。
カラオケに行った後も色んな場所に連れ回されるハメになった。
本当にあいつは文化部なのか?
一応運動部に入っている俺の方が先にストップをかけた位だ。
どんだけ体力が有り余ってるんだよ、化けもんか。
カバンを放り、疲れた体をベッドに腰掛ける。
遊んでる間も今も、笹原先輩と帰ったちとせが気になって仕方がなかった。
どこに行ったのか、まだ二人一で緒に居るのかって…
俺が気にすることじゃない、もちろんそんなのは理解しているんだが。
頭に浮かぶのはちとせの明るい笑顔。
疑いを知らない澄んだ瞳。
それを世間ではバカ正直と言うのかもしれないけど。
でも一番は、夕日に染まったいつもと違う様子のちとせ。
俺の知らない…ちとせ。
そのことに、俺の胸がざわつく。
なんでちとせの事ばかり考えてしまうのか。
前々からそうなんだよ。
気付けば目で追って、世話を焼いてしまう。
ほっとけないって言うか…妹、みたいな?
うん、きっとそんな感じの存在だ。