伝わらない、伝えられない
まるで自分に言い聞かせるように心で呟き納得する。
大体、思い描く相手が違うだろ?
俺が考えるべきなのは…
近くに居るようで遠い、手を伸ばせば届くんじゃないかと錯覚してしまいそうで…
でもそんなのは俺の勘違いで、手の中に収まることなんて絶対にない…
そんな奴のことで。
葵は俺をどう思っているんだ?
ちとせもそうだけど、葵の好きな相手を聞いたことがない。
そもそも相手自体いるのか。
長年あいつを見てきたけれど、思い当たる節はどこにもなかった。
けど…もし居たとして、それでどうする?
すんなりと諦めるのか?
それ以前に好きという気持ちがあっても、付き合いたいと思っていんのか。
「あぁもう! 分かんねぇ」
煮詰まった頭では、これ以上考えた所で無駄だろう。
…風呂でも入るか。
思考をストップさせた俺は、気分を変えようと部屋を後にした。