伝わらない、伝えられない
先輩、再びsideちとせ
次の日の朝。
私はホームルームが始まるまでの時間が暇なので、明とトランプゲームをすることにした。
テーマはブラックジャック。
ただ勝負するだけでは面白くないので、負けた方がジュースを奢る罰ゲーム付きだ。
現在、5回勝負の最終戦。
今までの内訳は引き分けの2対2。
つまり山場だ。
明とあたしが座る席の周りには、円を囲むように人が集まり事の成り行きを見守っている。
開いたあたしのカードの合計は19。
もう1枚引くと超える21を超える確率はかなり高い…
ゆえにあたしが手札を動かせない。
あとは相手の運の悪さを願うだけだ。
明は自分の手札に目を配らせると、あたし同様にガードを引かなかった。
引けないのか、それとも…
二人で目線を交わらせると同時に手札を見せる。
「…ごちそうさま」
明の手札は21。
文句のつけようもないブラックジャックだった。
「はい、ご所望のいちごオーレでございます」
「では遠慮なく」
嬉しそうにストローを挿してパックのジュースを飲みはじめる明。
普通の男子なら、淡いピンク色のパッケージは似合わないのに…
「どうかした?」
「いや、何も ?」
あまり違和感を感じられないのは、きっと明が綺麗な顔付きをしているからだろう。