伝わらない、伝えられない
先輩、再びside悠斗
「瑞希ー、呼ばれてんぞ!」
昼休みに4人で集まっていると、いきなりちとせが声をかけられた。
声がした方へとちとせが振り向く。
俺達も自然とそっちに目をやると、声をかけた男子の横には笹原先輩が居た。
それに気付いたちとせは、急いで先輩の所へと向かう。
…そんなに慌てる必要ねぇだろうが。
自分でも分かるぐらい不機嫌な表情へと染まっていく。
俺はそれを隠すこともせず、ちとせと先輩の姿を睨んだ。
「これ、昨日俺の家に忘れてっただろ?」
耳に入ってくる言葉にますます苛立ちが増していく。
ちとせに話しかけていた笹原先輩がふと、教室の中へと目を向けた。
偶然にも俺と先輩の視線が合わさる。
…いや、これは確実にあっちが俺を見ている。
何故俺を見るのか、それは知らない。
交わらせた視線をそのままにしていると、不意に先輩が笑った。