伝わらない、伝えられない
後輩と悠斗sideちとせ
「あら、悠斗くんじゃん!奇遇ですねぇ?」
あたかも今気付いたかのように装いながらあたしは喋り出した。
自分の思っている事を悟られない為と茶化すように…
「俺もこんな人の少ない所で会うとは思わなかったなぁ…ちとせちゃん?」
笑顔で話す悠斗の後ろに修羅が見える。
しまった!一人でいる時はこういう場所に近付くなって明と悠斗に言われてたっけ…
心配してくれる気持ちは嬉しいのだけれど、たまにお父さんみたいで嫌になる。
「こ、これはですね? 海よりも深く山よりも高い事情がございまして…」
「へぇ、その事情って?」
「………」
自慢じゃないが急に聞かれて答えられるほど順応な頭はしていない。
その為に押し黙ってしまう。
「まぁまぁ。これでも食べて落ち着いて下さいな、ね?」
少しでも宥めるようと悠斗にアイスを手渡した。
特にうんともすんとも言うこともせず、悠斗はアイスの包みを開く。
そしてそのままそれを口の中に放り込んだ。
「あー、あのさ…悠斗の友達、待ってるんじゃない? 早く行きなよ」
なるべく早く悠斗から離れてしまいたいあたしは、そう促した。