伝わらない、伝えられない
少し沈み気味に話すちとせ。
これは思いの外堪えたみたいだな。
そう思い、ちとせの家に向かって歩きはじめた時。
「なんか悠斗ってさぁ…」
「ん?」
「お父さんみたいだよね?」
「…はぁ!?」
ちとせから発せられた言葉に思わず叫んだ。
「うん。心配症の父親って感じがする」
自分一人で納得がいったようにウンウンと頷いているが、俺はちっとも納得がいかない。
「あっ、もちろん葵の前ではそうは見えないよ? あたしの前でだけ、たまにね」
「お前の前で親父っぽくなるのがすでに問題だわ!」
こいつはフォローしているつもりなのだろうか?
いや、全くそうは感じられない。
「え、あっ、もしかして傷付いた? ただの冗談だから!ね?ゴメンってば!」
「別に…」
予想以上にちとせに『父親みたい』と言われてショックを受けた。
そう思われたくないって感じた…真剣に。
冗談なのはちゃんと理解している。
なら何故こんなにも拒絶しているのか、それが謎で仕方がない。
俺自身の気持ちに疑問を抱く。
でもどんなに考えても答えが出ずに、疑問はどんどん膨らんでいくばかりだった。