伝わらない、伝えられない
決意と疑念sideちとせ
「さて、これは…どういう事なのかな?」
「な、何の話をしているのでしょう?」
曲がり角を曲がった途端にじりじりと悠斗が迫ってくる。
その目から感じる威圧感…
こ、これは…完全に怒ってらっしゃる!?
「お前さ…もうちょっと自分のこと、分かった方がいいぞ?」
「自分の…こと?」
どういう意味なのか。一応分かってるつもりなんだけど。
「たくさんの野郎から好意を持たれてる自覚とか」
「そ、そんな、好意なんて…」
「自分が女でひ弱だって事とか…」
確かに男よりは力がないとは思う。
でもそれが何だと言うんだろう?
悠斗はさらに距離を縮めてくるとあたしの手をいきなり掴んだ。
「ゆ、うと…?」
「振りほどいてみろよ」
戸惑いながら悠斗の名を呼ぶと、そう告げられた。
握られた手からは力が込められて少し痛みを感じる。
「なんでそんな事を…」
「いいから。やってみて?」
やらなきゃ離してくれなさそう…
あたしはとにかく言われた通りに、悠斗の手から逃れようと動かす。
でも全然微動だにしない。
なんで、男の力ってこんなに強かったの?
そう思うとあたしの中で、少しの恐怖心が芽生える……