伝わらない、伝えられない
決意と疑念sideちとせ


「さて、これは…どういう事なのかな?」


「な、何の話をしているのでしょう?」



曲がり角を曲がった途端にじりじりと悠斗が迫ってくる。


その目から感じる威圧感…


こ、これは…完全に怒ってらっしゃる!?



「お前さ…もうちょっと自分のこと、分かった方がいいぞ?」


「自分の…こと?」



どういう意味なのか。一応分かってるつもりなんだけど。



「たくさんの野郎から好意を持たれてる自覚とか」


「そ、そんな、好意なんて…」


「自分が女でひ弱だって事とか…」



確かに男よりは力がないとは思う。


でもそれが何だと言うんだろう?


悠斗はさらに距離を縮めてくるとあたしの手をいきなり掴んだ。



「ゆ、うと…?」


「振りほどいてみろよ」



戸惑いながら悠斗の名を呼ぶと、そう告げられた。


握られた手からは力が込められて少し痛みを感じる。



「なんでそんな事を…」


「いいから。やってみて?」



やらなきゃ離してくれなさそう…


あたしはとにかく言われた通りに、悠斗の手から逃れようと動かす。


でも全然微動だにしない。


なんで、男の力ってこんなに強かったの?


そう思うとあたしの中で、少しの恐怖心が芽生える……


< 67 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop