伝わらない、伝えられない
前を向いて歩きはじめる。
踏みしめる一歩一歩がとてつもなく重い…
逃げてしまおうか。
あたしの中でそんな気持ちが膨らむ。
でもここで逃げてしまったら、あたしはきっとずるずると落ちていってしまう。
休みの間に数回会った時も何とかなったんだもん。
今日だって、これからだって…絶対大丈夫。
そこまで長くはない悠斗達とあたしの関係。
それでもあたしにとっては、延々と続いているように思えた。
「おはよー、お二人さん」
絞り出した声。上擦っていなかったかとか、不自然じゃなかったかを無性に気にしてしまう。
こんなのただの挨拶なのに…
どうしてこんなにも緊張しちゃうのかな。
前までは話しかけるのに、躊躇なんてしなかった。
疑問があたしを埋め尽くしながらも、何となくは分かっていた。
あたしの気持ちの変化が引き起こしているのだと…
後ろに戻ってしまいたい。
でも…ダメだ!
少しでも前へ、前へ…進まなくちゃ。