伝わらない、伝えられない
明からのside悠斗
「いやー、まさか明がちとせをねぇ…
でもまぁちとせは可愛いし。そうなっちゃう気持ちもわかるけどね!」
「…あぁ」
ちとせ達と廊下で分かれた俺と葵。
自分たちの教室に戻ってきた葵は、いきなり興奮した様子で俺に話しかけてくる。
俺はというとそんな葵の話は右から左で、全く頭に入って来なかった。
明がちとせを好きになるのはあり得ることだ、全然おかしな事じゃない。
それなのに…何でこんなに気持ちが落ち着かないんだ?
仲が良いあの二人が付き合うんなら喜ばしい事だろ?
浮かんでくるちとせの赤らめた表情。
それが自分の中でモヤモヤした気持ちを広げていく…
これ以上二人のことを考えたくない。
全く別の事を考えようと模索しようとする。
だが、また知らないうちに明とちとせの会話を思い出してしまって…
『好きなんだ、ちとせのこと』
今まで聞いたことのない大人びた声。
いつもちとせと一緒におちゃらけている奴だったのに。
すぐに返事を出さなかったのは何故なのか。
あいつの答えが無性に気になって…
気付けばまたちとせが頭の中にいた。