伝わらない、伝えられない


明の告白を聞いてしまったあの時から、早くも一週間が経った。


最近のちとせは何かと明ばかり見ている。


そして、見た後は目まぐるしく表情を変えて…


その姿から頭を悩ませているんだというのは目にみえて分かった。


そんなちとせを見て苛立ちが募る。


なんで俺がイライラしているのか…


本当はもう分かりつつあった。


でもこれは絶対に認めてしまっちゃいけない気持ちだ。


だってそうだろ?


俺は葵が好きなんだ。


ちとせにもはっきりそう言ったし、俺自身そうだと思ってる。


それなのに二人の女を好きになる?


他の奴らがどうだとか、そんなのは知らねぇ…


だけど俺自体がこんな優柔不断を許すつもりはない。


忘れよう、今なら引き返せるから…


芽生えはじめた新たな感情は、俺の外を出れずに仕舞い込まれる事になった。


元から胸に決めた葵を思い続ける為に。


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