伝わらない、伝えられない


無神経な俺のせいできっと、あいつをたくさん悲しませた。


もしかすると、泣いたりもしていたのか?


ちとせはいつも明るくて皆の中心の人物。


浮かべる微笑みに周りもつられて笑顔になって…


俺もその笑顔に助けられた。何度も。


そんなちとせの泣き顔なんて、見たこともねぇよ…想像すら出来ない。



本気で合わせる顔がない。


今日の昼休みも部活を理由に屋上へは行かなかった…行けなかった。


事実を知ってしまった今、あの二人にどう振る舞えばいいのか分からねぇ。


そこで平然としていられる程、俺の肝は据わっていない。



「悠斗くーん。怖い顔してどうしたの?今日部活休みだよね?この後四人で…」


「葵」


「何?」



ただ…



「少し、話があるんだ」



俺もけじめを着けようと決めた。


俺一人だけ傷付く事なくのうのうとしてるとか…それは考えられなかったから。


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