【短編】空っぽの心
「私、隆志と会うまで自分が大っ嫌いだった。やりたいことも見つからなくて、満たされない思いでいっぱいだった。」

隆志はいつものように、静かに話を聞いてくれている。

「ホントに自分がこの世界に存在してるのかも分からなくて、毎日が同じことの繰り返しだった。」

「うん。」

そう相づちをうちながら、隆志は立ち止まったままの私の手を、暖かい手で包んでくれた。

「でもね、隆志があの時助けてくれてから、私の生活が少しずつ変わっていった。誰にも言えなくてため込んでた思いも、隆志が拾い上げてくれたよね。」

そう言って隆志の方に顔を向けると、優しい笑顔を返してくれた。

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