シルバーブレット
27年前、癒鼬組と渋鷺組の抗争が一層激しさを増していた。



当時若干28歳で若頭だった緒方を頭に譲り、18歳にして組の中核にいた烏田切を参謀にする。

これ以上大事にならないうちに治めるには、そうするしかない。


そう思った癒鼬組の組長は、緒方に惚の字だった渋鷺組組長の娘との縁談を持ちかけたのだ。



緒方には、結婚の約束までしていた心底惚れてる女がいるとも知らずに。



「噂を聞いたんだと。あんたの性格上、組は捨てれないと思った。だから、自分から身を引くことにしたんだと。腹の中に俺がいることも告げずにな。」



足枷にならないように、
自分と同じぐらい大切な組の為に、
私にはこの子がいるわ


螢の秘めたる想いは、緒方が知らぬまま煌に受け継がれていた。



「縁談の話が持ち上がってから、螢の様子がおかしかった。だが、何も言わなかった。何も言わずに消えた。ありがとうさようなら、とだけ書かれた紙切れ一枚置いて。だから俺は捨てられたと思って……」


「自暴自棄になって、結婚したと。そういうことか。」



想像すらしていなかった真実に、志麻達は声すら出ない。
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