シルバーブレット
「それと、確かこうも言ってたな。」



緒方の緒は、命・糸の意味を持つの。

私の結灰の結は、結ぶでしょ。


龍臣さんと私で、命を結んで煌が生まれたのよ。



幾度となく聞かされた、両親のなれ初め話。

その度に、母が恋する少女そのものに煌は見えた。



「お袋はあんたを死んだ今も愛してる。俺はそんなお袋を誇りに思ってる。」



人を愛するというのは、こういうことなんだ。

煌はそう感じた。


緒方のことを父親として認めることが出来たのも、今こうやって落ち着いていられるのも、全て母親のおかげだと煌は思う。




「あんたが誰だろうが、後悔してようが、何しようが関係ねぇが、俺が生きることだけは邪魔すんじゃねぇよ。」



煌の言葉に、緒方は顔をあげる。


してやったり。

まるで悪戯っ子の様な笑みの煌。


生まれてきたことは、間違いじゃない。

生まれてきてよかった。


そう物語っているように緒方には見え、初めて表情を緩めることが出来たのである。
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