シルバーブレット
「鈍感なのは父親似だと、俺は思うんだけどさ。」



倉庫街で見た、緒方の姿を思い浮かべる。

惚れた腫れたの恋愛沙汰には、とても疎そうなあの強面を。



「けどよ、煌のことなら俺にぐらい相談しろよな。」



そういう意図がないとはいえ、隠し事はいい気がしない。

煌のことなら、尚更だ。



「一人で抱え込むなって言ったの、そっちだろうが。」



桐也に挑まれた時、諭してくれたのは扇崎。

支えてくれたのは、もちろん夏渚だ。


この親子にだけは、不死鳥の名を持ってしても敵わないと思う秋。


目の前にある、無機質な石の塊を見上げる。



「まっ、俺も煌も、もう大丈夫だ。」



秋には、春貴が。

煌には、隼弥が。


そして、仲間も。


皆がいる。


だから……、



「安心して眠ってろ。」



逝ってしまった、もういない人物を安心させる様に微笑んだ。
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