シルバーブレット
「その後の足取りはまだ掴めていません。ただ、殺害される数日前に癒鼬組に出入りしていたとの情報が五課からありました。」



「癒鼬組!?何でそんな所に…結灰、何か知ってるか?」



「……いや、何も思い当たらないっスね…現役の頃だって関わりなかったはずっスし…」



煌は考えた後、少し歯切れ悪く答える。




癒鼬組(ユイタチグミ)といえば、この辺りの暴力団の中では代々仁義を重んじる穏健派として有名である。


今は組長で当時若頭だった御方龍臣(オガタ タツオミ)が、20数年前に敵対していた強硬派の渋鷺組(シブサギグミ)の組長の娘と結婚してからは目立った抗争はない。


その当時、2大勢力とされていた癒鼬組と渋鷺組の、実質渋鷺組が癒鼬組に吸収されるという形の結婚だった為、関係者の間では政略結婚だったのではないか、と噂があったほどである。


まぁ、実際のところ渋鷺組の組長の娘の一目惚れがキッカケだったらしいのだが…




「思い当たらなくても、向こうは何か知ってるかもしれない。明日聞き込みだな。」



大物の名前があがったことで、何か進展するかもしれないと志麻は期待をこめる。
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