氷の魔女とチューリップの塔
窓から見下ろせば地上のチューリップ畑は、一面茶色く枯れている。

ロゼルが持つチューリップは、その形のまま、銀に似た魔法金属に変化していた。

それは闇の魔法使いの力の媒体。

これこそが闇の魔法使いが残したお宝。

「わお、きれい!
高く売れそうね!」

「…売るなよ」

ロゼルはそれをスリサズにポンと投げて渡した。

「えっ? ちょっ!」

「…振ってみろ」

「魔法の杖としてってこと? どれどれ」

それはスリサズの小さな手にも良く馴染み、光の当たる角度によって、白、黄、赤と色を変えた。

「うん! すっごくいい感じ!」

スリサズはふわふわと魔力の雪を撒き散らしながらクルクル踊った。

窓から差し込む光が雪をきらめかせ、スリサズの瞳もキラキラと輝く。

「…まだらのチューリップ。
…良く似合う」

ロゼルがしみじみとつぶやく。

「それって花言葉でいうと、叶うあてのない告白をして失恋しろってこと?」

「…自分で調べろ」

そしてロゼルは腰を上げると、何故か不機嫌そうにスタスタと塔の階段を下り出した。

「あー! 待ってよロゼルー!」

スリサズが、杖をふりふり、パタパタと追いかける。

二人の足音が、塔を吹き抜ける風の音にとけていく。

まだらのチューリップの花言葉は…






“美しい瞳”
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