二番目の女。



そんな武に背中を優しく撫でられて、また涙が溢れ出した



『――ヒッ、』



「…泣いて、いいんだよ」



『ううっ…武…』





ぎゅ、と武の背中に手を回してまた涙を流した



颯太と付き合ってた期間は1ヶ月少しだけど、とても長く感じられたし、私は雰囲気に恋してただけで颯太の事なんてこれっぽっちも好きじゃなかったんだと思う



優しかった颯太より、あのホテルで私を汚いゴミみたいに見る目、冷たい印象しか思い浮かばなかった





『あ…りがと…ッ』



頭をわしゃわしゃと撫でで、うん、うん、と優しく声をかける武に不覚ながらドキドキした






『私…しばらくここに――――』


~♪~♪~


"いさせてほしい"と言う前に、地獄の音楽が流れだす




それは勿論私の携帯で




電話をかけてきた人なんて1人に決まってる。


いや、正確に言うと1人しかかけてこない







私がガクガクと震えだすと、武はゆっくり私を離して



「大丈夫…大丈夫…大丈夫だから…ね?」


と言って私の頭を撫でそれに手を伸ばした





流れ続ける着信音をピ、と押した



「――はい」


『ッ』



着信を切ったのかと思ったら出た事にビックリした





"―――テメェ誰だよ!?"


ビクッ、と体が揺れる


少し距離があるのに颯太の怒鳴った声が聞こえる




「胡桃の救世主」




――え?



"―――ハ?意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇよ!胡桃に変われよ!"




「…無理、お前もう胡桃に近づくな」



『――ッ』

ゾクゾクッ、とした



その低い声に



恐怖とかじゃなくてドキドキとした



"――何言ってんだよ!?胡桃と付き合ってんのに会わない訳――"




「胡桃は俺が幸せにする」





ああ、もう、やめてよ




"胡桃に変われよ!"



「お前みたいに俺は殴らない」


"――ッ、な"




「お前なんかより何倍も幸せにする…さよなら」




"待てよ!"なんて声が聞こえたものの



ピ、と切ってそのまま電源を落とした





ドキドキ、と胸が高鳴って頬が赤くなってるのが自分でも分かる


勘違いかもしれないけど、武の顔も少し赤い




――でも、これは私を守る為の演技


なのに、なんでドキドキしてんの…
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