二番目の女。



普段使ってるファンデがあってよかった


ホッとしてそれに手を伸ばすと



「――あの子、顔にアザがない?」



ヒソヒソと、話す声が聞こえた



「――聞こえるって!男と来てたからDVとか?」






『――ッ』



帽子を緩く被ってたからか、身長が大して変わらない彼女たちからは私の顔が見えちゃうらしい






違う、武は違う。ヤダ、ヤメテ。





「――あの子も逃げればいいのに。DVされてる女の人って可哀相な自分に酔ってるタイプ?」



…クスクス、と小さな笑い声が聞こえて目に涙が溜まった





「――もう行こ。呑み会間に合わないじゃん」


「――あ、そうだ!」



バタバタと去っていく音が聞こえて震える手でファンデをカゴに入れた






違う、違うって言ってやれば良かった


武は違うって


私を守ってくれたって――



なのに、なのに、言えなかった





彼女たちが去ったことにホッとして涙が溢れ出した




『――ッ、ヒ、』






「――胡桃?」



背後から優しい声がしてゆっくりと振り向いた





武は目を見開いて、"何された?"とつぶやいた





『違う、違うの…DVやってるって勘違いされて、それで武がしてるって勘違いされて――…違うって言ってやれなかった自分が憎い…武は私の事助けてくれたのに…』


涙を流しながら言う私に武は背中をポンポン、と撫でで



私のカゴを持ってない片方の手をぎゅ、と握り





「――帰ろっか」


と言ってくれた




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