スレイブプリンセス


”……、お前の髪の毛は綺麗だ。俺はお前もお前のこの髪の毛もすべてが大好きだ…”

頭の中に響く低い声…。
次は高い女の人の声だと思われる声が響いてきた。

”……!ありがとう!……が大好きって言ってくれてとても嬉しい!私この髪の毛の事初めて好きって思えたわ!髪の毛大切に伸ばすね!”

そこで頭の声に響いた会話は終わった。
次に響いたのは頭の中ではなかった。

「おい!サン!!」

私は自分の名前を言われ我に返った。

「…あのゼン?今なにか聞こえなかった?」

「声?そんなもん聞こえねーぞ!それより髪の毛!何してるんだよ!」

先ほど少しぼーっとしてたため、髪の毛を切ったことにも忘れていた。

左手で持っているナイフで切った髪の毛の束をゼンに差し出す。

「これを売ります。だからどうかお金を下さい。」

「それはいいが、お前髪の毛切ってよかったのか?髪の毛は女の命とも言うんだろう?」

ゼンらしくないセリフを聞いた私は微笑した。

「ふふっ、あなたらしくないわね。そんな事言うなんて。」

それを聞いたゼンは顔を真っ赤にした。

「なっ!ちっ、違う!俺の好きなやつがいつも髪の毛は女の命とか言ってたんだ!」

「ゼン、あなた好きな人いたんですね。」

「あっ!くそっ、なんでこうもからかわれるんだ…。あぁ、いたよ、好きなやつ。そいつも髪の毛をいつもケアして、大切にしてたんだよ。」

「そうなんですか。今その方はどちらに?」

ゼンが一瞬悲しい顔をした。

「今は行方不明だ。もう死んでるかもしれねぇ。」

私はそのゼンの言葉にハッとした。

「ごめんなさい…辛い事を言わしてしまって……。」


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