スレイブプリンセス
「今度は何なんだ。」
呆れた目でこちらを見る。
「…お別れを言ってもいいですか…?大丈夫です。逃げませんから…。」
「…わかった。行ってこい。だが、3分たったら馬車を出発させるいいな?」
「はい、わかりました。」
私は頷き、サイエたちが乗っている馬車の方へ足を動かした。
「サイ…エ!」
サイエの名を聞こえるように呼ぶと、サイエが気がつき、こちらを見た。
「サン?!」
サイエが馬車の窓から私を見る。
「どうしてここにいるんだい?捜したんだよ。ほらサンも早く乗ろう?」
サイエが私に手を伸ばすが私はその手を取らないで首を横に振る。
「私はここに残る…。」
「どうして?あんたまさか、また変なことして私たちを庇う気なんじゃ…。」
「ねぇ、サイエ。」
「……。」
「私ね、子供達と約束したの…。いつかここから連れ出してあげるって。」
「サンはどうなるんだ?また何かを犠牲にするのか?」
私は首を横に振る。
「犠牲なんかじゃない…。私は私の意思でここに残るんだよ…。」
「それが犠牲って言ってんだよ!」
サイエが怒鳴る。
私は下を俯く。
「ねぇ、サイエ…。サイエは好きな人はいる?」
そう聞いてサイエの顔を見てみるとサイエの頬が赤くなった。
「こんなときになんだよ…。…一人いるよ…。そいつの名前ゼンって言うんだけど…。ゼンとずっと一緒にいたから私の口調、男っぽくなっちまったんだ…。」
私は目を見開いた。
そうか…そういうことだったのね。
ゼンが言ってた。髪の毛は女の命って言ったのは彼女がよく言ってたからって。
だから、サイエがそのセリフを言ったときデジャヴを感じたんだね…。
「でも、あいつもう私のこと忘れてるかもな。もう5年も経つし…。」
サイエ…ゼンは覚えてるよ、サイエのこと…。
だけど、それを私は口には出さない。
だから、代わりに横に首を振った。