危険なキス
 
「あ、いや……。
 家の整理してたら、出てきてさ……
 ちょうどあたしの時計が壊れちゃったから、使わせてもらってるだけだよ。
 誰のか分からなくて……」

「ふーん」


つまんないの、というような顔をして、麻衣子は唇を尖らせた。


本当のことなんて言えない。

これは、湯浅先生が、あたしの部屋に忘れていったもの。

あたしはなぜか、先生がいつもしていたこの時計を、自分で身につけたくなったのだ。
  
< 104 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop