危険なキス
 
「ほら、早く席につく!」


数人の生徒が、いつまで経っても席につかず、学年主任がちょっと怒り気味で注意する。
そしてようやく全員が席についたとき、学年主任は改めて咳払いをした。


「もう分かっているように、佐々木先生は今日から産休に入りました。
 というわけで、臨時ですが、ここ2組の担任と、物理を教える先生がいらっしゃったので、あいさつをしてもらいます。
 先生ー」


学年主任の合図とともに、教室の前のドアが開く。

その途端、教室から黄色い声交じりでざわついた。



う……そ………



ほとんどの生徒が、嬉しそうに騒ぐ中、
あたし一人、時間が止まったようにその先生を凝視していた。


なんで……



「今日からこのクラスの担任を任されました、湯浅奏人です。
 実は学校の教師として生徒をもつのは初めてですので、みなさんに迷惑をかけてしまうと思いますが、よろしくお願いします」

 

そこに現れたのは
もう会うことがないと思っていた湯浅先生だった。
 
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