危険なキス
「ちょっとちょっと紫乃っ!!」
朝のホームルームが終わると同時に、麻衣子があたしの席に駆けてきた。
麻衣子も湯浅先生のことを知っている。
本性を知ったあの日、一緒にいたから……。
だから、突然あたしの学校の教師として現れたことにとても驚いていた。
「ど、どういうこと!?確か湯浅先生って、父親か誰かの病気で実家に帰ったって話じゃ……」
麻衣子には、湯浅先生が家庭教師を辞めたということだけ話していた。
まさか、あたしと先生が、あんな関係になってしまったことは話していない。
「うん……、その…はずなんだけど……」
あたしもそう聞いてた。
突然辞めた先生。
でも家庭の事情だから仕方ないと、自分の中でも一生懸命言い聞かせていたのに……。
「あたしにもわかんないよ……」
あたしは、教卓で女子生徒に囲まれている湯浅先生を、ただ見つめることしか出来なかった。