危険なキス
8章 思いがけない言葉
「という原理に基づいて、こういう結果になる」
物理室。
テーブルを囲うような席から、普段は寝る人や雑談をする人が多い中、ほとんどの生徒が教卓にいる先生に注目している。
それもそのはず。
教えているのは、湯浅先生だからだ。
女子生徒はもちろん、目がハートになりながら先生を見つめ、意外にも男子生徒からも人気で反抗する生徒はいない。
なぜなら、学校にいる湯浅先生は完璧で、優しくて誠実。
そして家庭教師ではなかった、ちょっとした冗談を交えての授業をこなしていた。
完璧な仮面。
あたしには、そうとしか思えなかった。
というか、物理の先生だったんだ…。
家庭教師の時は、全般を教えてもらってた。
教え方も、どれも申し分のない感じだったので、先生の担当が物理だったことに、ちょっとだけ驚いていた。
「まだ理解出来ないところがあったら、別途質問にきてください」
と、先生が締めの言葉を言ったところで、チャイムが鳴った。
普段ならみんな嬉しいという意味のため息をつくのに、「終わっちゃった…」と嘆く声も聞こえる。
あたしはそんなみんなの反応に、ただただ呆れたため息を漏らすだけだった。