危険なキス
「なあ」
「うん?」
あたしの質問には答えず、楠木は逆に問いかけてきた。
顔をあげると、少し怒った表情で楠木があたしを見ている。
「どうして麻衣子に協力したんだ?」
「え……?」
それはあまりにも突拍子のない質問だったので、思わず言葉を詰まらせた。
というか、一瞬自分の気持ちがバレていたのかと思った。
だけど気を取り直して、何食わぬ顔で楠木を見る。
「どうしてって……。そりゃ、親友の恋だったから……」
「……」
そう。
でもこれには嘘はない。
麻衣子の恋だったからこそ、あたしは自分の気持ちよりも麻衣子を優先した。
そしてそうしたことに、あたしは悔いはない。
楠木は一瞬黙ったあと
「そっか……」
と一言だけ発して、片付けを進めた。
あたしも、つられて手を動かした。