危険なキス
 
「なあ」
「うん?」


あたしの質問には答えず、楠木は逆に問いかけてきた。
顔をあげると、少し怒った表情で楠木があたしを見ている。


「どうして麻衣子に協力したんだ?」
「え……?」


それはあまりにも突拍子のない質問だったので、思わず言葉を詰まらせた。

というか、一瞬自分の気持ちがバレていたのかと思った。

だけど気を取り直して、何食わぬ顔で楠木を見る。


「どうしてって……。そりゃ、親友の恋だったから……」
「……」


そう。
でもこれには嘘はない。

麻衣子の恋だったからこそ、あたしは自分の気持ちよりも麻衣子を優先した。

そしてそうしたことに、あたしは悔いはない。

楠木は一瞬黙ったあと

「そっか……」

と一言だけ発して、片付けを進めた。
あたしも、つられて手を動かした。
 
< 127 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop