危険なキス
 
「忘れ物……どこにも見当たらないんですけど」


とりあえず、下手に慌ててしまうと相手の思うつぼなので、極めて冷静に聞く。
だけど先生は、


「ああ、だって嘘だし」


あっけらかんとそう返しただけだった。


「……もうっ!それなら帰ります!!」

「優しいねー、紫乃ちゃんは」


帰ろうとドアへ向かうと、その背中に先生が意味深な言葉を投げつけた。
あたしは歩みを止めて振り返る。


「何がですか」

「恋敵。親友ちゃんだったんだね」

「……」


図星をさされて、言葉が詰まった。

この人は、さっきのやりとりを見ただけで、分かったというのだろうか……。
 
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